イラク 陸上自衛隊撤退の奈落
政府からイラクのサマワ陸上自衛隊撤退の政治ニュースが発表された。国民感情的には、待ちに待った自衛隊撤退劇である。小泉劇場最終幕の出し物としては良く出来たシナリオになった。2年半年、イラク人、自衛隊員の負傷者を出すことなく、人道復興支援は完結する。
イラクの治安は昨年から悪化の一途を辿っている。泥沼の状況で、米軍戦死者も今年になり急増して2千4百人に達している。この状況でのイギリス軍の撤退は、有志連合の枠組みからすれば理解し難いと素朴に思うのが普通であるが、現在の日本の状況では、自衛隊撤退論議の背景でその真相が究明されない状態でこの劇も終幕しそうである。そして、航空部隊の援助拡大については、単なる物資等の輸送業務しか内容報道されていない為、話題にならないだろう。しかし、今後の自衛隊航空部隊の活動範囲は内容の変質、地域的に拡大されることは事実である。従って、航空部隊の米軍支援は、政府がいくら詭弁を弄しても人道復興支援ではない。
今回の撤退劇は歴史的意味を持つ。即ち、今後イギリスは米国との世界戦略的展開を持たない。もはや、ブレア政権は風前の灯で次期政権は、EUへ軸足を移すことは既定方針と言っても過言ではない。このイギリスと米国の関係は、米国のCIA長官の交代劇が象徴しているように、昨年からのシナリオと言える。イギリス議会ならびに市民は、これ以上、ブッシュの独り善がりに付き合いきれないというのが共通した認識になっている。ブッシュ大統領が宣戦布告(イラク治安維持戦略での戦争ではない)した、「テロとの戦い」と米国が判断した圧制や人権侵害を根絶させる為に戦い続けるという話には、もうこれ以上お付き合いできないと判断したのがイギリス軍の撤退である。そして、この決定は昨年の10月29日「在日米軍再編」の中間報告発表の時点で既に決まっていたことである。「在日米軍再編」のキャッチフレーズは米軍と自衛隊が寝食を共にすることによって、世界平和の構築に邁進しようというものだ。
先日3夜連続のNHKスペシャル「在日米軍再編」で、マイケル・グリーンがこれをいみじくも言ってのけた。「アメリカ人と一緒に食べて寝て、共同の目的の為に考えよう。「在日米軍再編」は英国との米英同盟の関係ではなく、一体化した共同体である」と。世界の先進国の戦略展開は、ブッシュの一極、単独覇権主義とは一線を画する戦略を選んだ、その結果が、突然、日本は同盟国から運命共同体国家(属国ではなく、戦略について共に考えるファミリー)に昇格された訳である。
イラク撤退劇のキーワードを握っていたのはイギリスであった。イギリスの撤退と同時に、日本は「在日米軍再編」により集団的自衛権を内包した。自衛隊は地雷を抱いた状態での、米軍との一体化戦略展開に変貌したことになる。これは、世界への宣戦布告と同じことになる。従って、それだけ危険の増す状況を自ら創り出したことになる。自衛隊撤退劇は、実は世界への宣戦布告に他ならない結果を生んでしまった。
陸上自衛隊撤退を契機に、「9条を守る」運動の総点検作業を速やかに実施しなければ全くの手の施しようがなくなってしまう。撤退発表記念日を本来の「9条を守る」運動への昇華記念日になることを期待する。