混迷を深めるパキスタン 3

【12月29日政治ニュース】 28日の夜パキスタン内務省は、ブット氏の死因は自爆者の爆風で車体のサンルーフに頭部を強打したものによると発表した。
29日毎日新聞は、パキスタン内務省の発表を伝えている。
『ブット氏暗殺:「車体で頭部強打」と内務省 国民に衝撃=【ニューデリー栗田慎一】パキスタンのブット元首相暗殺事件で、同国内務省が28日夜に発表した「車体で頭部を強打した打撲傷が死因」との調査結果は、ブット氏が率いたパキスタン人民党関係者や国民に大きな衝撃を与えている。当初は銃弾による死亡と言明した医師も発言を撤回し、地元メディアは政府による情報操作の可能性を指摘。政府は、事故死に近い状況を示唆することで、国内で高まる政府批判を回避する狙いがあるとみられる。
27日の事件発生直後、ブット氏が搬送された国立総合病院の医師は、同氏を検視後、「首と頭部に計2発の銃弾を受け、うち首の傷が死因となった」と記者団に語った。
【写真】29日、ブット氏の墓所で祈る支持者たち(ロイター)
しかし28日夜の内務省の発表では、「銃弾は3発発射され、いずれも命中していない。銃撃音に驚いたとみられるブット氏が車中に逃げ込もうとした際、サンルーフの水平扉に頭を強打し、それが死因になった」と、全く違った内容だった。
男が使用した自動小銃は、自爆の際に粉砕されており、何発発射されたかなどの鑑定は不可能。また、ブット氏の遺体はすでに遺族らによって埋葬されている。イスラム教徒は埋葬遺体の掘り返しを禁忌としており、遺体の再検視には反発が予想される。
事件の実行犯は銃を発射した後、自爆した。これは当初、ブット氏の射殺に成功した犯人が、身元特定を困難にするために自爆したとみられた。しかし政府発表に従えば、暗殺は失敗したことになり、政府の治安対策への批判は緩和される。
内務省はまた電話の傍受記録を元に、事件はアルカイダ関係者によるものとの構図を明確に打ち出した。しかし傍受内容は文書で公表されただけで、音声は未公開。名指しされた司令官は関与を否定し、現時点では真相は依然不明だ。国民や人民党支持者の間には、軍や情報機関の関与を疑う声が根深くある。』(29日毎日新聞)
注目すべきは、現地からの第一報となった、『27日の事件発生直後、ブット氏が搬送された国立総合病院の医師は、同氏を検視後、「首と頭部に計2発の銃弾を受け、うち首の傷が死因となった」と記者団に語った。』この記事にある。さらに、『当初は銃弾による死亡と言明した医師も発言を撤回し』とあるように、他国の私たちは、現実のパキスタン社会の情態を理解できないというのが本当のところだ。
軍事政権として独立してから、クーデター、暗殺未遂と常に暴力が政治を蹂躙してきているパキスタン政府は、このブット氏暗殺自爆事件が物語るように混迷を深めるばかりだ。(続く)

