パキスタン大統領選 40
【2月10日政治ニュース】パキスタン大統領選挙も残すところ後1週間になった。ムシャラフ政権に対する抗議デモ、反武装勢力タリバン、アルカイダの仕業といわれる自爆攻撃は相変わらず跡を絶たないと世界のメディアは伝えている。
選挙戦も終盤に入り、政府は選挙の世論誘導をもくろんで、ブット元首相暗殺原因の国際的調査報告を発表している。
ブット元首相暗殺原因については、政府は爆弾テロの爆風による頭部強打の見解を表明、それに対して、ブット人民党周辺は、銃弾による暗殺だと現場証言を通じて主張していることが、世界のメディアでこれまで伝えられてきた。
パキスタン国民の多くは、当初から政府の発表に対して疑いをもち、ムシャラフ政権による暗殺説を根強くもっている。また、ブット人民党は、選挙戦を通じて政権に対してそのことを訴えてきた。それに対して、政府は国民の不満を払拭する為に、英ロンドン警視庁の調査チームを招聘して事件解明に当たってきた。
8日産経新聞は、7日米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に掲載されたロンドン警視庁の調査結果を報じた。

【写真】ブット元首相の暗殺現場を調べる英警視庁の捜査員ら=1月5日(ロイター)
『ブット氏死因は頭部強打、英警視庁結論と米紙=米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は7日、昨年12月にパキスタンのラワルピンディで爆弾テロにより暗殺されたブット元首相の死因について、爆発の衝撃で乗っていた車に頭を強打したことが原因と英ロンドン警視庁の調査チームが結論付けたと報じた。
ムシャラフ大統領の主張を裏付ける内容。元首相の夫ザルダリ氏が共同総裁を務めるパキスタン人民党(PPP)は、元首相を狙った男が撃った銃弾を受けて死亡したとの見方を示しており、反発も予想される。』(8日産経新聞)
新しい事件当時の映像がでる
9日NHK衛星放送は特集番組「ブット暗殺の謎・15日間の記録」を放映した。放映のなかで暗殺現場の新映像が紹介され、事件解明の決定的証拠に当る場面を丁寧に注釈してみせている。
そのスロー映像による証言は、ブット元首相がサンルーフから消えた瞬間の後に自爆の炎が映しだされている。また、別角度からは、ピストルの発射光も映っている。ピストルの発射映像については、事件後しばらくしてマスコミ報道もされている。
新しい暗殺事件映像は、7日英ロンドン警視庁の調査チームが発表した原因説を覆すのに十分な事実資料と断定してもよいものだ。これでムシャラフ政権の暗殺説が立証されてもおかしくないのだが、パキスタン社会ではその徹底的裁きはどうしてか棚上げにされてしまう。
結果残るのは、この事件に対する国民の反応、ムシャラフ政権陰謀による暗殺説が48%、反武装勢力による暗殺が17%という世論で、最終的には選挙に反映されるだろうというところに留まる。
ブット元首相暗殺事件は結論が出たようなものだが、何かにつけて疑問符が残る暗殺事件である。決定的な不信は、緊急搬送された時の医師の声明だ。2箇所の銃弾による死亡が発表されたが、翌日、政府発表の爆風頭部強打説に発表をひるがえしている。現在、この医師とは誰も連絡が取れないといわれている。また、確かな映像が残るピストル説だが、確かな証拠には違いないのだが、事件当初発表された、2、3回の発射音があったとの証言に対して、新映像のピストル発射光の時は、発射音がなかったという直近の証言が出てきた、つまりサイレンサー銃を使ったとする証言である。さらに、親族による検視拒否の姿勢だ、死後直ぐにブット一族の廟塔に納められた。
最後に、どうしてピストル暗殺説と自爆攻撃説で政府と野党が膠着した抗議合戦に終始するのか。政府が当初から発表している自爆攻撃説は、政権には警備上の落ち度がなかったことの証明になり、だから「テロとの戦い」を進めなければならないのだ、というムシャラフ政権の有利な選挙展望につながるからだ。また、ピストル暗殺説は、明らかにムシャラフ政権陰謀暗殺を証明することになる。理由は簡単だ、タリバン、アルカイダはピストルによる暗殺を企てた前例がないからだ。
何れにせよ、これまでに発表された記事、映像を手繰ると、事件現場側近の目撃者は、首に銃撃痕があったと証言している。私たちは、素朴にこの人たちの証言と放映された新映像から、ブット元首相の死亡原因は、ピストルによる暗殺だったと解釈したい。