セルビア・コソボ 再び内戦か 26
「ユーゴの貧しい家」 高失業率70%
【3月8日政治ニュース】 コソボは独立しても経済の改善が望めないという現実を伝えているが、その状況を端的に示している記事が6日産経新聞に掲載されている。
『独立コソボの課題 汚職、闇経済が蔓延 健全化のカギ握る地下資源=セルビアから独立したコソボが国家としての基盤を整えつつある。ただ、汚職問題をはじめ、経済的に自立できるかなど課題が山積している。
「ここはバルカン半島の心臓部。“闇経済”の存在や汚職は避けられない」。独立宣言が行われた2月17日、プリシュティナのプレスセンターで、業務担当幹部(30)はため息交じりに語った。
コソボの闇経済に詳しい関係者(36)によれば、コソボとセルビアとの境では、セルビアで30セント(約50円)の銃弾の密売が頻繁に行われ、コソボ内で最終的に1ユーロ(約160円)で売られるという。汚職にまみれて身に危険を感じる人物が私的に護衛を雇うためで、「国境取引の際には係官を買収するのが慣例」(同)という。
パキスタンからアドリア海に抜けて、欧州へと流れる麻薬ルートもコソボ経由という。欧州の犯罪はアルバニア系マフィア絡みが多いとされる。
コソボを監督する国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)もマフィアの“標的”となる。各種免許の取得など法務はUNMIKが行うためで、関係者は「バングラデシュやジンバブエなど、途上国の職員らを買収する」と具体名まで挙げた。
国連開発計画(UNDP)の調査によれば、コソボの約20%の人々は皮肉にも「国連は汚職まみれ」との認識を持つという。UNMIK広報官アレキサンダー・イバンコ氏(45)は「残念ながら、『腐ったネズミ』はどこにでもいる」と苦悩の表情を見せた。
コソボでマフィアが跋扈(ばっこ)するのはなぜなのか。それは公には約50%、実態は70%とも指摘される高失業率とも関係がある。
「ユーゴの貧しい家」とも形容されたコソボでは、人々の最大の勤め先は政府機関だ。民間も最低賃金で数人雇うにすぎない。それでも雇用市場には毎年、吸収可能な数の約5倍の3万人の若者が流入する。あぶれた人々が、各所で暗躍する環境は十分、整っている。
それでも稼ぐことができなければ、ドイツやスイスなど欧州に出稼ぎに行くケースが多い。闇労働を含む出稼ぎ労働者は全人口の16%にも上る。あるタクシー運転手(36)は「欧州に親族を出さない家族はいない」と語った。ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレによれば、出稼ぎ労働者が母国に送金する額は約4億5000万ユーロ(約720億円)と、ざっと政府予算の半分にもなる。
いびつな経済構造を立て直すため、世銀と欧州連合(EU)は6月にも復興支援会合を開く。駐コソボ米政府代表部も「昨年度に約7800万ドル(約82億円)を支援した米国は今年、支援を4倍にする」と強調した。
ただ、国際社会頼みでは健全な経済は育たない。そうした中で注目されるのは、褐炭(推定埋蔵量約150億トン)の存在だ。現在は火力発電所で、需要の8割にしか満たない1日800メガワットの発電しかできないが、2014年には3倍近くの発電ができる可能性を秘めている。世銀のフランツ・カプス元南欧担当調査員は「コソボは将来、バルカン半島に電気を輸出できる」と話す。
コソボの地下にはほかにも、鉛や亜鉛、ニッケルなどが眠っており、地下資源を豊富な人的資源でいかに開発していくかが経済自立への重要なカギとなりそうだ。』(コソボ・プリシュティナ 黒沢潤3月6日産経新聞)(続く)