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2008年03月11日

セルビア・コソボ 再び内戦か 29

「人道的介入」は死語になりつつある 5
【格物致知】スーザン・ソンタグ 功罪相償うでは許されない


【3月11日政治ニュース】 1999年3月のコソボ空爆をめぐっては、日本は極めて間接的な範疇にあった関係から米国、欧州連合のような「人道的介入」による空爆の是非論争は起きなかった。極めて一部のバルカン半島周辺の研究家、外交専門家などが論評する程度で、それも欧米での論争紹介に留まるものがほとんどであった。

私たち国民が一般に目に触れたのが1999年7月14日朝日新聞の大江健三郎氏のコーナー「未来に向けて」(スーザン・ソンタグ(大江健三郎宛書簡)ぐらいであったように記憶する。
スーザン・ソンタグの人道的「正義の戦争」論である。
それまでの欧州連合で主張されていた「国際法的に違法であっても道義的に正しい」という「人道・道義」を強調した「新戦争論」であった。それをスーザン・ソンタグは、さらに進化させて「道義」を「正義」に単純化させた「正義の戦争」論を断定させたことで、米国を世界の警察国家のニュアンスを与えた。

スーザン・ソンタグスーザン・ソンタグ 「正義の戦争」論について
2004年12月29日各紙は、スーザン・ソンタグ氏死去のニュースを伝えた。テレビも追悼番組を放映した。当然、スーザン・ソンタグ氏の業績を天才的知識人、ジャーナリストとして賞賛、称える内容の記事、放送であった。また、イラク戦争を批判した米国の平和主義者として紹介された。
しかし、スーザン・ソンタグ氏は、強硬なセルビア空爆支持者で加担者だったことについては言及されることがなかったように記憶している。

コソボ独立宣言に思い、スーザン・ソンタグ氏死去について当時の各紙の論評を思い出すにつけ、やはり「正義の戦争」論を検証する必要性を強く意識せざるを得ない。歴史的負の遺産は常に権力によって「正義」に変貌させられる宿命にある。しかし、そのシナリオを作るのは常に権力に束ねられた極めて人間的な一般である。だから、権力の巣窟を許さない為にもせめてもの追懐が必要であると考える。

各紙のスーザン・ソンタグ氏死去の報道について、「政治ニュース」以前のサイトで論評したソンタグ氏についてこの紙面で紹介する。
2005年1月7日 タイトル「米国人 スーザン・ソンタグ」

『2004年12月28日、スーザン・ソンタグ氏死去。米思想界を代表する知識人・作家として報じられた。話題に事欠かぬソンタグ氏であったようだが、私自身は米思想界そのものに興味がなかった為、疎遠であった。しかし、現在の米、ブッシュ帝国の暴走を目撃して、米国に「正義の国」を編曲したその背景、イラク侵略戦争から捏造された「正義の戦争」が日本をエイズ化した根本に、99年NATOのコソボ空爆を支持したソンタグ氏の思想的発想が脳裏に浮かんだ。

朝日新聞が企画した大江健三郎氏との往復書簡による平和談義が思い起こされる。手玉に取るソンタグ論調に大江氏は終始にこやかな応答であった。その書簡内容、ソンタグ論調から米国の米国人の危険な発想を感じ取ったのは私一人ではなかった筈である。確信ではなかったものが事実証拠を瞼に極印された衝撃と自信に帰属した絶望を再確認する結果となったソンタグ発言は、コソボ、アフガニスタン、イラク空爆への誘いに他ならなかった。ソンタグ氏は敢えて5年前に「米国人の良心」を代弁していたのである。否、アングロサクソンの血とでも言うべきか。

「懼れ・心配がある」根拠が先制攻撃を可能にする「正義の戦争」をソンタグ氏が発言したことによって、ブッシュ大統領とイラク戦争支持米国人は米国を体現することに何ら躊躇いを持つことなく、自信に満ちた強い笑顔を我がものにした。さらに深刻な事態は日本を「正義の戦争」目的で米国汚染を蔓延させたことである。加担している日本政府と国民を欺きアングロサクソン化した大罪は、日本文化ではもはや覆すことが不可能な次元に日本を追いやってしまった。その根本要因は日米同盟である。日米同盟が日本人を模造品にしてしまった。ソンタグ氏の訃報を知り改めて私にとって米国は遠い国であることを知らされた。それを決定付けたのは米国の「良心」とやらの理解不可能な「知の領域」である。』(続く)