膨脹する中国 11
中国兵士が僧侶装い関与か
【3月30日政治ニュース】各国とも中国との利害外交が今後のチベット問題を方向付ける。
友好的、敵対的の二面外交を展開する米国が、「ボイコット」を口にしない限り大幅な事態の進展はないと考えてよい。欧州連合もドイツが表明したように政治的意図と関係なく開会式の辞退を述べるに留まるだろう。
これは、チベット抗議行動が今後さらに拡大、過激になっても同じことが言えそうだ。既に、中国政府はチベット内外において戒厳令状態で警備にあたり、僧侶など抗議活動の芽を摘み取る捜索に乗り出している。さらに僧侶に成りすまし煽動策を講じて拘束に全力を傾注しているとも言われている。
29日毎日新聞は僧侶の抗議行動と関係なく、多数の拘束、寺院内の捜索などがあったと伝えている。
『チベット暴動:「僧侶100人拘束」NGO発表−−四川省・チベット仏教寺院=インドを拠点とする非政府組織(NGO)「チベット人権民主化センター」によると、中国四川省アバ・チベット族チャン族自治州アバ県で28日、中国政府の治安部隊が100人以上の僧侶を拘束した。
数百人の治安部隊がチベット仏教寺院に集結し、僧侶らに外に出ないよう命じた上、寺院内をくまなく捜索。ダライ・ラマ14世の肖像画や関連する書類などを持ち去り、僧侶らを次々に拘束したという。また、治安部隊は今後の抗議運動に備え、寺院の周囲に土のうを積み上げてバリケードを設置した。』(29日毎日新聞=中国総局)

【写真】29日、ニューデリーで記者会見するチベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世(AP=共同)
さらに、煽動策についてダライ・ラマ14世の証言が30日中日新聞で紹介されている。
『中国兵士が僧侶装い関与か 暴動でダライ・ラマが示唆=チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は29日、ニューデリーで記者会見し、PTI通信によると、中国軍兵士がチベット人僧侶に変装し、暴動に加わっていた可能性があるとの見方を示唆した。
ダライ・ラマは「数百人の中国兵士が僧侶の衣服を着て、僧侶を装っていたと聞いた。だが、彼らが持っていたのはチベットの刀ではなく中国の刀だった」と述べた。
またダライ・ラマは北京五輪を支持する立場を強調する一方、「中国は開催国として人権や宗教の自由、環境を尊重しなければならない」と指摘。米国などが中国政府にダライ・ラマとの直接対話を促していることについて「いつでも受け入れる」との姿勢を繰り返し、「わたしはチベットの独立を求めていない」と強調した。
中国政府が、チベット自治区ラサを一部外国メディアに取材させ、米外交官らに視察させたことには歓迎を表明し「ラサ郊外での調査もするべきだ」と述べた。』(30日中日新聞=ニューデリー29日共同)
今後の各国における展開はやはり米国の対応が方向性を決めるだろう。米国の対応状況を超える他の国はないと考えてもよい。
27日産経新聞は、ブッシュ大統領が胡錦濤国家主席と直接電話で意見を交わしたその内容を紹介している。現実的には、この内容がチベット問題と北京オリンピックの関係を示す全てであると考えられる。
『米大統領 中国にじわり圧力=チベット仏教僧のデモに対する中国当局の弾圧に対し、ブッシュ米大統領は26日、騒乱の発生以来、初めて中国の胡錦濤国家主席と直接電話で意見を交わした。ブッシュ大統領は、かつてチベット統治のトップも務めた胡主席に対し、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世との「実質的な対話」を迫る一方、北京五輪のボイコット問題にはあえて踏み込まないことで、逆にじわりと圧力をかける姿勢を示した。
チベット騒乱を受けて、米政府は中国への接触レベルを大使・次官級から外相級と順次引き上げ、ようやく首脳級の協議に踏み込んだ。米国内でのブッシュ政権に対する弱腰批判や、中国側が依然、軍・治安部隊による鎮圧方針を崩さないことを踏まえてのものだ。
ペリーノ米大統領報道官によると、ブッシュ大統領は、(1)チベット情勢への懸念表明(2)ダライ・ラマと中国首脳の実質的な会談要請(3)外交官、報道関係者によるチベット訪問の許可要請−を中国側に伝えた。
中国側によれば、胡主席は一連の騒乱を「明らかな犯罪活動」と非難し、警備当局の対応をあくまで正当化した。米側の求めるダライ・ラマとの直接対話については、「祖国分裂活動の停止」「チベット独立主張の完全な放棄」などに加え、「北京五輪を破壊する活動の扇動停止」を新たに条件とした。
北京五輪について米政府は「政治とスポーツは別」として、ブッシュ大統領の視察訪中の計画を崩さず、こうした機会を通じて中国側に「さまざまな問題への懸念」を伝えるとしている。開会式のボイコットに言及したフランスのサルコジ大統領と対照的に、慎重な外交対応によって中国に、じわじわと圧力をかける方針に徹している。
中国側が北京五輪の妨害に懸念を示したことも、裏を返せば五輪の成否が胡錦濤政権にとり、きわめて重大な政治問題となっていることの証左だ。態度を留保するほど、米側の五輪カードは重みを増す。
ただ、中国共産党チベット自治区委員会書記時代に、ラサに戒厳令を敷いた胡氏は、チベット問題の複雑さを熟知する。仮にダライ・ラマとの対話実現で譲歩すれば、他の民族問題や国内矛盾に飛び火する危険も承知している。それだけにチベット問題の処理は米中双方にとって慎重を要する難題だ。』(26日産経新聞=ワシントン=山本秀也)
なお、日本の対応など紹介するに値しないと考えるが一応、紹介しておく。福田首相は、『チベット騒乱に関する日本の対応について「早期に、かつ平和裏に問題が沈静化することを強く期待する」と表明し、中国政府とダライ・ラマ14世の直接対話を「歓迎する」との立場を示した。』というものだ。(続く)