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パキスタン戒厳令

2008年03月26日

パキスタン大統領選 47

旧与党参加の三竦み新政府

【3月26日政治ニュース】 ザルダリ氏は苦肉の策で急場をしのぐ戦略でムータヒダ民族運動(MQM)の代表ギラニ氏を新首相に選出した。人民党の分裂回避を考慮してのもので、ファヒム人民党副総裁派の離脱を防ぐのが目的である。避けなければならない展開は、イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派に第1党の座を奪われることだ、致命傷となる。また、虎視眈々とシャリフ派はその事態をうかがっている。それだけザルダリ氏人民党とシャリフ派は犬猿の仲なのだ。

人民党とシャリフ派とは国策に埋めがたい隔たりがある。既に、両党首脳が一致した「チャウダリー前最高裁長官の復職」も、人民党は消極姿勢になっている。また、外交、特に米国との関係では、「テロとの闘い」に対して人民党は継続姿勢で、シャリフ派は見直しを掲げている。今後の展開は、両党の関係悪化で分裂に転じることも十分考えられる。
25日の毎日新聞は、この現実を伝えている。



『パキスタン:新政府は「米国主導のテロ対応を見直す」=ネグロポンテ米国務副長官は25日、パキスタンを訪れ、連立政府の一角「イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派」総裁のシャリフ元首相と会談。シャリフ氏は会談後、「新政府は(米国主導の)対テロ戦争の対応を見直す、と米側に伝えた」と明かした。ムシャラフ大統領が行ってきた武力弾圧路線の見直しを意味する。
だが、新政府を主導するパキスタン人民党は、故ブット前総裁の政策である「対テロ戦争の継続支援」を確認している。シャリフ氏の発言は大統領の支持政党を連立政府に受け入れた人民党へのけん制とみられる。』(3月25日毎日新聞=ニューデリー栗田慎一)



ギラニ新首相を擁立した連立政権だが、ザルダリ氏は5月の下院補欠選挙に立候補して首相の座を目指す、新首相はそれまでの暫定首相といわれている。そこでファヒム人民党副総裁の動きが注目される。というのも、ファヒム氏はムシャラフ大統領と良好な関係にあるといわれ、権力構図は依然、三竦み状態で推移する宿命にある。
26日毎日新聞は、パキスタン新政府の連立の前途多難な模様を伝えている。



『パキスタン:「寄り合い」政権、船出難航 対立抱え、閣僚指名見送り=パキスタン新首相に選出されたギラニ氏は25日、ムシャラフ大統領に就任宣誓した。だが、予定された主要閣僚の指名は、連立政府内の足並みの乱れから見送られた。中核の旧野党勢力は「反大統領」を表看板に掲げるものの、旧与党も加えた「寄り合い所帯」が実態で、大統領への圧力にも微妙な影響を与えそうだ。

 連立政府を構成するのは、暗殺されたブット元首相の夫ザルダリ氏を共同総裁とする「パキスタン人民党」▽シャリフ元首相率いる「イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派」▽ムシャラフ大統領を支持する旧与党「ムータヒダ民族運動(MQM)」の3党。旧野党の人民党とシャリフ派は90年代に激しい政権争いを展開。政策も党是も違う両党が連立を組んだのは、いずれも国会議席の過半数を得られなかったためだ。

 第1党の人民党も一枚岩ではない。ブット氏暗殺後に党執行部入りしたザルダリ氏と、これを快く思わないファヒム副総裁が対立。同氏は大統領の権力基盤である軍部とのパイプを持ち、「大統領との良好な関係」を保つ姿勢を見せている。

 強硬な反大統領派であるシャリフ派との連携で党内が分裂することを恐れたザルダリ氏は、MQMを連立政府へ招くことでバランスをとった。だが、逆にシャリフ派との関係はぎくしゃくし、25日の閣僚指名もMQMへのシャリフ派の反発が原因で流れてしまった。

 ギラニ新首相は24日、ムシャラフ大統領の非常事態宣言で自宅軟禁されていたチャウダリー前最高裁長官の解放を指示。同氏が復職すれば、憲法規定に反して昨年10月に大統領に再選されたムシャラフ氏は窮地に追い込まれると見られている。しかし、MQMの政権参加などによる足並みの乱れは、チャウダリー氏の復職問題にも影響を与える可能性もあり、新政権の行方はなお不透明だ。』(3月26日毎日新聞=ニューデリー栗田慎一)



【予告】
【政治ニュース】のカテゴリー「パキスタン大統領選」で、これまで07年10月18日の「ムシャラフ政権の行方 ブット氏帰国」から47回にわたりニュース記事を掲載してきました。しかし、既に予告したように31日をもって更新が途絶えます。
実は政治展開としては、これからが興味深い連立三竦み合戦が繰りひろげられ、パキスタン人民の政治に対する思いと政府の政治センスが如実に語りだされます。今後の興味深い政治展開をお伝えできないのが残念ですが、ご了承ください。
31日更新最終ページで、カテゴリー「パキスタン大統領選」について言及したいと考えていますが、恐らく47回をもって最後になります。
皆様には、その後の展開、連立政権の混迷状態は、何処の国も同じ昏迷を呈する現実を確認、注目して頂き、日本の連立しかない不幸な政治状況をとくと鑑み、それでも展望を見出してもらいたいと切に願っています。



2008年03月14日

パキスタン大統領選 46

ザルダリ氏 「暫定首相」か

【3月14日政治ニュース】パキスタン政府は国民議会(下院)を17日に初招集すると11日に発表している。第1党となったパキスタン人民党と反ムシャラフ派諸政党は連立内閣樹立で合意ができており、招集後直ぐに新内閣が発足する予定になっている。また、チョードリー前最高裁長官らの非常事態で解任された判事を復職させることでも合意している。

やはり、最大の関心ごとは、首相に誰が着任するかであろう。最有力者は、パキスタン人民党の共同代表、ブット元首相の夫のザルダリ氏といわれている。また、その為の環境配備は着々と進められている。ザルダリ氏の汚職罪7件の有罪・無罪を判断せず裁判を打ち切る「免訴」処置の決定である。パキスタン汚職法廷は、大統領側の意向で人民党との連立を考え働いた可能性が高い。
「免訴」処置を受けてザルダリ氏の首相実現が現実味を帯びてきた、その模様を14日毎日新聞は伝えている。



『<パキスタン>ザルダリ氏、公民権回復 下院補選に立候補へ=パキスタンの汚職事件を専門に審理する汚職法廷は14日、パキスタン人民党のザルダリ共同総裁の残り1事件についても有罪、無罪の判断をせずに裁判を打ち切る「免訴」の決定をした。すでに6事件の免訴判決が2回に分けて出されており、ザルダリ氏は公民権を回復した。5月中旬に実施予定の下院補欠選挙に立候補し、首相就任を目指す。

 判決はムシャラフ大統領が公布した「国民和解協定」の一環。
ただ、ザルダリ氏が海外で取得したとされる不動産をめぐり、パキスタン政府が「公金を使用した」として損害賠償を求めるなどしている2件の民事訴訟が英国とスイスの裁判所で係争中。近く発足する人民党主導の連立政府が訴訟を取り下げる予定。

 一方、人民党は16日にも新首相候補を発表する。候補者はザルダリ氏が首相資格の下院議員に当選するまでの「暫定首相」となる公算が大きい。』(ニューデリー栗田慎一=3月14日毎日新聞)(続く)



2008年03月04日

パキスタン大統領選 45

孤立する米国の「テロとの戦い」 2
死に神「リーパー」 タリバンをミサイル攻撃


【3月4日政治ニュース】 警察幹部の葬儀中に自爆攻撃があったというのはショッキングな事件であるが、さらに今までになかった辺境地域社会を構成する部族長会議「ジルガ」に対する自爆攻撃が2日に起きている。パキスタン新政府とタリバンなど武装勢力との橋渡しが期待されたが、今回の自爆攻撃で和平交渉への糸口が閉ざされたといえる。
3日産経新聞はその模様を伝えている。



『部族の長老まで狙う パキスタンのテロ激化=パキスタンの北西辺境州でテロ攻撃が激化している。2日に同州内の部族地域で発生した自爆テロでは、従来イスラム過激派とも折り合いをつけることができる“最後のとりで”とされていた部族の長老による会議「ジルガ」が狙われ、100人以上が死傷し、すでに武装勢力が、見境いのない攻撃に出ていることを印象づけた。

 テロ攻撃は下院・州議会選挙後に一段と激化し、25日には首都近郊のラワルピンディで軍高官の車両が爆破され、29日には北西辺境州で警察幹部が路肩爆弾で死亡し、その警察官の葬儀もテロに見舞われた。
2日のテロは、部族の長老を含む約1000人が集まり、部族地域からの軍・治安部隊の撤退の申し入れなどの討議を終えたところで起きた。イスラマバードの消息筋は「すでに武装勢力は標的を選ばない。軍や治安部隊の士気の低下や新たな政府への揺さぶりを狙い、深刻なテロが頻発している」と指摘する。

 部族地域は、北西辺境州の他地域と異なり、歴史的に中央政府が直轄地域としてきた。だが、実際は中央政府の力は行き届かず、部族の長老らの指導による“自治区”の色合いが強い。このため長老らは、タリバンを含むイスラム武装勢力との交渉窓口の役目を担うこともあった。が、昨年3月以来、目に余るテロ攻撃にアルカーイダの外国人部隊との緊張が高まったため、テロに対して歯止めをかける姿勢を鮮明にしていた。

 新政府の一角を担うパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派は、これまで、テロ対策の一案として部族指導者らとの対話をあげてきたが、今回のテロ攻撃はそうした効果も不透明にしており、消息筋は「今はテロ阻止の対策がない。今回最も動揺したのは、大規模なジルガで狙われないだろうと思っていた部族の長老らではないか」としている。』(バンコク=菅沢崇=3日産経新聞)

[3日政治ニュース]で伝えた2月25日日経新聞の報道において、イスラム過激派武装組織(通称パキスタン・タリバン)スポークスマンが表明した、「選挙での反大統領派勢力の勝利を歓迎する」とした上で、「(戦いを仕掛けるなど)ムシャラフ政権が犯した過ちを繰り返さなければ、各政党と交渉する用意がある」という声明が反故にされている現実が横たわる訳だが、これにはそれなりの事由がある。

[2007年7月20日政治ニュース]で朝鮮日報の「アメリカ空軍が最先端の無人攻撃機「MQ‐9リーパー」をアフガニスタンとイラクに配備する」という記事を伝えた。そして、この記事は、的確な報道であったことを証明する記事を2月29日AFP通信は報じているのだ。



『パキスタン部族地域で武装勢力の拠点破壊、米軍無人機が空爆か=パキスタンの部族地域、南ワジリスタン(South Waziristan)地区で28日、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)と旧支配勢力タリバン(Taliban)の潜伏場所が、米軍無人機から発射されたとみられるミサイルにより破壊され、アラブ人を含む少なくとも13人が死亡した。

 同地区Azam Warsakの住民はAFPに対し、無人機から発射されたミサイルで家屋が爆破され、数キロメートル離れた地点でも大きな爆発を聞いたと語った。
部族地域に近い同国北西部ペシャワル(Peshawar)の治安当局者も、米軍無人機からミサイルが発射されたと語った。別の当局者は、犠牲者の多くがアラブ人であることを明らかにした。また、破壊された家屋は、アフガニスタンに駐留する北大西洋条約機構(NATO)が指揮する治安部隊と米軍に対する攻撃の「作戦拠点」として武装組織が使用していただけでなく、アルカイダとタリバンメンバーの会合場所になっていたと語った。

 この攻撃についてパキスタン軍の発表はない。一方、アフガニスタンに駐留する米軍の報道官も、この攻撃に米軍とNATOが関与したとの「報告はない」と述べた。

 米軍無人機は、アルカイダ指導者ウサマ・ビンラディン(Osama Bin Laden)容疑者のネットワークのメンバーを狙い、パキスタン・アフガニスタン国境付近で攻撃を行っているが、パキスタン政府は、外国の軍隊が国内で活動することは許可しないと繰り返し主張し、米軍の関与を認めていない。』(2月29日 AFP)



総選挙後のパキスタン情勢を完全に無視した米国本土ブッシュ政権単独「テロとの戦い」が相変わらず行われているのだ。常に全世界において、当事国が和平交渉のステージに立つことを模索しても、米国はお構い無しに米国の権益だけを考えて行動するのだ。
従って、イスラム過激派武装組織(通称パキスタン・タリバン)スポークスマンは声明を反故にした訳ではない。「リーパー」攻撃に対しては、タリバンに限らず、怒りを禁じ得ない、人間に対するこれ以上ない冒涜である。



『パキスタン政府は、外国の軍隊が国内で活動することは許可しないと繰り返し主張し、米軍の関与を認めていない。アフガニスタンに駐留する米軍の報道官も、この攻撃に米軍とNATOが関与したとの「報告はない」』と両当事関係者は述べている訳だが、それもそのはず、「リーパー」は、パキスタンから約1万キロ離れたアメリカ本土空軍基地の遠隔操縦されている攻撃機なのだ。
当事者抜きの「テロとの戦い」は続けられているのだ。これは米国が「テロとの戦い」に挑んでいる米国単独の「テロとの戦い」という自作自演に他ならない。これは一種クレージーな「リーパー」状態なのだ。



[2007年7月20日政治ニュース]はこの事態に対して糾弾している。
『「リーパー」とは、がい骨の姿に経衣(きょうえ)を羽織り、巨大なかまを持った西洋の「死に神」を意味する言葉らしい。マイケル・モスーリー米空軍参謀総長はこの名称に「まさに致命的な本性を表す名前だ」といって喜んだといわれる。
米国人は破壊に対する正常遺伝子が欠落している人種なのだ。そして、無念なのが、この無人攻撃機計画に日本人研究家も参加していることだ。何もこれだけではないが、日本は法律上での後方支援だけではなく、戦争そのものに米国と深く広く関わっているのだ。
恥知らずの日本人とつい自分まで責めたくなるのは、私だけなのだろうか。』(7月20日政治ニュース)



「リーパー」の現実が明るみになった以上、悪いことは言わない、直ぐに「日米同盟」を解消したほうが良い。これはもはや[政治ニュース]単独の見解ではない、日本の常識化しつつある。現に先日、石原慎太郎氏は一旦「日米同盟」を解消したほうが良いと述べている。後は、私たちの決断と実行あるのみだ。


繰返すが、悪いことは言わない、一刻も早くクレージーな「リーパー」状態の米国と決別しよう。

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2008年03月03日

パキスタン大統領選 44

孤立化する米国の「テロとの戦い」

【3月3日政治ニュース】 ムシャラフ政権崩壊が現実になってきているが、ブッシュ大統領は「ムシャラフ大統領を全面的に支持する、緊密な関係を維持する」と相変わらず強調している。
しかし、ムシャラフ大統領は現在、辞任を拒否しているが、弾劾裁判も視野にいれている野党連立陣営は大統領の退陣を狙っている、時間の問題だ。

ムシャラフ大統領の退陣で明らかに政策転換される事態は、「テロとの戦い」である。元々ムシャラフ大統領とブッシュ政権は「テロとの戦い」にご執心だったが、国民は不安を抱きながらも米国戦略のイスラム過激派への戦いには乗り気ではなかった。
2月25日の日経新聞は、現実にその背景を反映して、野党第1等の人民党はタリバン系武装勢力との和平協定提案の模様を報じている。



『タリバン系武装勢力、パキスタン新政府と和平交渉の用意=アフガニスタン国境に近いパキスタン西部の部族地域を拠点とするイスラム過激派武装組織(通称パキスタン・タリバン)は24日夜、同国下院選での野党勝利を歓迎。新政府と和平交渉に応じる考えを表明した。同組織のスポークスマンを名乗る人物が、指導者ベイトラ・メスード司令官の声明としてメディア各社に伝えた。
声明は「選挙での反大統領派勢力の勝利を歓迎する」とした上で、「(戦いを仕掛けるなど)ムシャラフ政権が犯した過ちを繰り返さなければ、各政党と交渉する用意がある」としている。

 「パキスタン・タリバン」は約1万人の兵力を持ち、アフガニスタンの前政権勢力タリバンや国際テロ組織アルカイダとの関係が指摘される。メスード司令官は、昨年末のブット元首相暗殺事件の首謀者としてパキスタン政府から名指しされていた。(2月25日イスラマバード=山田剛=日経新聞)』



パキスタン新政府とタリバン系武装勢力の和平交渉が実現化する状況ではあるが、現実は選挙後も以前と全く変わらない「テロとの戦い」が双方で行われている。
直近では2月29日夜、自爆攻撃で死亡した警察幹部の葬儀中、参列者に対して自爆攻撃があったと、3月1日中日新聞は伝えている。



『テロ被害者葬儀で40人死亡 男自爆、パキスタン=パキスタン北西辺境州スワト地区の中心都市ミンゴラで2月29日夜、テロで殺害された警察幹部の葬儀中に男が自爆し、地元テレビによると、参列者ら少なくとも40人が死亡した。50人以上が負傷したとみられ、死者はさらに増える恐れもある。

 警察幹部は同日、同州南部を車で移動中に路上に仕掛けられた爆弾が爆発、運転手ら2人とともに殺害された。国営APP通信によると、葬儀はミンゴラの高校で営まれ、約1000人が参列。爆発後に何者かが発砲したという。
地元テレビによると、被害者には幹部の息子のほか、多数の警察官が含まれており、イスラム政党幹部も死亡した。いずれのテロもイスラム過激派による犯行とみられる。』(3月1日イスラマバード1日共同=中日新聞)



2008年02月26日

パキスタン大統領選 43

ムシャラフ大統領 辞任検討か
パキスタン自爆攻撃
【写真】パキスタン北部ラワルピンディで自爆テロ=AP

【2月26日政治ニュース】 パキスタン総選挙で野党圧勝の背景を受けて連立政権が誕生する。追い詰められたムシャラフ大統領は辞任をほのめかしたと伝えられている。
25日時事通信は辞任説を伝える英日曜紙サンデー・テレグラフの記事を紹介している。

『パキスタン大統領が辞任検討か=英紙=24日付の英日曜紙サンデー・テレグラフは、パキスタンのムシャラフ大統領が辞任を検討していると報じた。18日の総選挙で勝利した野党勢力が連立内閣樹立で合意したのを受け、大統領は選択肢が尽きたと考えているという。
 同紙によると、ムシャラフ大統領の側近は、大統領は野党との権力闘争を望んでいないと指摘。また、友人の1人は「彼は既に出口戦略の検討に着手した。数カ月ではなく数日の問題だと思う」と述べた。』(ロンドン24日時事)

ムシャラフ政権の「テロとの戦い」は、野党連立政権で大きく方針転換される可能性はあるとも言われているが、反政府武装集団、タリバンなどの自爆攻撃は一向に跡を絶たない。特に最近は軍への攻撃が目立っているとも伝えられている。26日朝日新聞は25日の軍幹部への攻撃があったことを伝えている。

『軍幹部の車に自爆テロ、中将ら8人死亡 パキスタン=パキスタン北部ラワルピンディで25日、軍幹部の乗用車に爆発物を身につけた若い男が近づいて自爆し、内務省報道官は、陸軍医療部隊の責任者の中将を含む8人が死亡したと明らかにした。軍のイスラム過激派掃討作戦に対する報復とみられる。
首都近郊のラワルピンディには陸軍総司令部があり、軍人を狙った自爆テロが相次ぐ。年末にはブット元首相の暗殺事件も起きた。』(26日朝日新聞)

パキスタンにおける反政府武装集団、タリバンなどの政府攻撃は、ブッシュ政権がパキスタンを足がかりに「テロとの戦い」を展開したその矢先から年々増え続けている。
1月6日日経新聞は、パキスタンの独立系シンクタンク「パキスタン平和研究所」が自爆攻撃などで亡くなった死者数を発表している内容を伝えている。

『テロや戦闘の死者3400人・パキスタンの07年=ブット元首相暗殺後の暴動による治安悪化を理由に総選挙が2月に延期されたパキスタンで、イスラム過激派のテロや戦闘による昨年の死者が3448人に上ったことが分かった。同国の独立系シンクタンク「パキスタン平和研究所」が6日までに、政府発表や主要メディアの報道を基にまとめた。このうち一般市民の犠牲は1974人という。

 昨年の死者数は2006年に比べ約1.3倍で、05年比では約4.9倍と増加。同研究所は「ブット氏暗殺のほか、軍への攻撃や兵士の拉致が相次いでいる。テロとの戦いの成果は疑問視される」と指摘しており、イスラム圏唯一の核保有国の深刻な治安状況が浮き彫りになった。
同研究所によると、テロリストの軍などへの攻撃は1306回で、隣国アフガニスタンのイスラム原理主義組織タリバンの政策に共鳴する武装勢力による犯行が大半を占める。』(イスラマバード6日共同=6日日経新聞)

2008年02月23日

パキスタン大統領選 42

米国のシナリオ崩れる
シャリフ【写真】21日、イスラマバードで会談後、握手するシャリフ元首相(右)とザルダリ氏(AP=共同)

【2月23日政治ニュース】21日夜、第1党のパキスタン人民党ザルダリ共同総裁は第2党イスラム教徒連盟シャリフ派のシャリフ元首相と予定通り会談、両野党は連立内閣をつくることで合意したと22日中日新聞は伝えている。
ザルダリ氏は「国民総意に基づいた政府にする」と述べ、また、シャリフ元首相は第1党の人民党の権利を最大限尊重するとして、暗に人民党からの首相選出を認めた結果が合意を見出したものと推測される。つまり、補欠選挙に立候補する可能性を示唆するザルダリ氏の首相就任もありうるという展開だ。問題は人民党ファヒム副総裁との仲がしっくりいっていないと囁かれていることもあり先行き不透明な政権構想も考えられる。
合意の最大の要因は、「大統領の即時辞任」、「非常事態宣言で解任された最高裁長官らの復職」問題について合意をみたことが挙げられている。

 
『2野党が連立合意 ムシャラフ氏、進退の危機=パキスタン総選挙で下院第1党となった野党パキスタン人民党は21日夜(日本時間22日未明)、第2党の野党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派と連立内閣を組むことで合意した。ムシャラフ大統領の与党とは連携を拒否、ムシャラフ氏が進退を迫られる可能性が極めて強まった。

 人民党のザルダリ共同総裁とシャリフ派を率いるシャリフ元首相は首都イスラマバードで同日夜に会談。終了後の共同記者会見でザルダリ氏は「民主主義の未来は私たちの手中にある。パキスタンのために共に働く」と述べ、連立合意を発表した。

 議員から選出される首相についてシャリフ氏は「人民党の権限を尊重する」と述べ、人民党内から選ぶことに合意。両氏とも下院選に出馬しておらず資格がないため、ファヒム人民党副総裁らの名が候補に挙がっている。ただ、ザルダリ氏は補選への出馬を否定せず、自らの首相就任の可能性に含みを残した。』(イスラマバード22日共同=22日中日新聞)

2008年02月21日

パキスタン大統領選 41

野党は米国のシナリオを拒否するか
ブット派副総裁【写真】2月19日、パキスタン総選挙、野党が圧勝。写真は第1党となった野党・パキスタン人民党(PPP)の共同総裁を務めるアシフ・アリ・ザルダリ氏。PPP提供(2008年 ロイター)

【2月21日政治ニュース】第3党になったムシャラフ大統領にとって一番望ましい政権構想は、野党パキスタン人民党(PPP)と連立を組むことである。これは総選挙実施の水面下での米、英国のシナリオでもあった訳だ。ムシャラフ陣営にとっては、暗殺されたブット元首相との確約された首相の地位を彼女の夫が代役することでもよい訳だ。
選挙前からの反武装勢力による自爆攻撃や銃撃戦で約5百人が死傷したといわれる多大な犠牲を払ったが、結果はシナリオ的に収まり、米国が期待している「テロとの戦い」は継承される可能性もある。

しかし、今回の野党圧勝の選挙結果から読み取れることは、米国流ムシャラフ政権に対する根強い不信感、反発が表面化した。また、「テロとの戦い」に対する素朴な疑問と米国流に対する不信感が増幅した結果だと理解できる。
さらに、シナリオ通りにいかないと思わせるのは、軍のトップ幹部たちの「テロとの戦い」に対する違和感が出始めているため、ムシャラフ大統領と距離をもち始めたと伝えられていることだ。

何れにせよ、「パキスタン人民党(PPP)」と「イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派」、そして与党「イスラム教徒連盟クアイディアザム派」の三竦みの行方が今後のパキスタン社会を大きく変貌させる。
21日西日本新聞は連立協議の可能性を伝えている。



『パキスタン 与党、人民党に連立要請 米紙報道ムシャラフ氏、辞任否定=総選挙でムシャラフ大統領の与党が惨敗したパキスタンで、大統領側近の軍高官らは20日、第一党となった野党パキスタン人民党(PPP)のザルダリ共同総裁と首都イスラマバードで会談し、与党との連立を求めるムシャラフ氏の意向を伝えた。政府関係者が明らかにした。

 人民党の獲得議席は単独過半数に達しておらず、ザルダリ氏は第2党となったシャリフ元首相率いる野党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派と連立する方針。軍高官らは会談で、ザルダリ氏にシャリフ派と連携しないよう求め、与党の同連盟クアイディアザム派との連立を要請したという。人民党は会談の事実を否定している。

 シャリフ氏はムシャラフ政権批判の急先鋒(せんぽう)で、2野党連立が成立すればムシャラフ氏は退陣に追い込まれる恐れがある。
一方、20日付の米紙ウォールストリート・ジャーナルによると、ムシャラフ氏は同紙に「安定した民主政権樹立のために前に進まなければならない」と述べ、辞任しない考えを表明。「大統領と首相の衝突は避けたい」として、人民党など野党から選出されるとみられる首相に協力を求める考えを示した。

 ザルダリ氏は21日にシャリフ氏と連立協議を行う予定で、ムシャラフ氏側は協議前に再考を求めるよう説得を図ったとみられる。』(イスラマバード20日共同 21日西日本新聞)



2008年02月20日

パキスタン大統領選 40

野党連立政権は可能か

パキスタン選挙

【2月20日政治ニュース】 パキスタン総選挙は予想通りの結果に収束した。戒厳令に始まりブット元首相暗殺に終わった総選挙は野党の圧勝になり、ムシャラフ政権率いる「イスラム教徒連盟クアイディアザム派」(PMLQ)は野党に転落、少数派との連携で多数を目指すと伝えられている。野党勝利での最大の注目は、野党「イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派」(PMLN)と第1党になった「パキスタン人民党(PPP)」が連立を組むかに向けられている。
19日ロイター通信は総選挙の結果を報じている。



『パキスタン総選挙、野党が圧勝=18日に実施されたパキスタン下院(定数342)総選挙は、野党が圧勝した。19日の暫定開票集計結果によると、昨年12月に暗殺されたブット元首相が率いた野党・パキスタン人民党(PPP)が同情票も手伝って第1党となった。
 ただ、単独で過半数は獲得しておらず、連立を組む必要がある。
 一方、与党でムシャラフ大統領支持派のパキスタン・イスラム教徒連盟(PML)はこの時点で第3党に転落。同党の広報担当者はロイターに対し「有権者はわれわれの政策を拒否した。われわれはその意思表示を受け入れる。国家の最大の利益のため、われわれはどの党とも協力する意向だ」と述べ、連立に前向きな姿勢を見せた。
 現地時間午後6時(日本時間午後10時)時点の開票結果によると、PPPが86席、シャリフ元首相率いる野党・イスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派が65席を獲得。PMLは37議席に留まっている。
 一部の議席は選挙対象外。70議席は女性と宗教的少数派の枠となっている。 
 シャリフ元首相は、ムシャラフ大統領に対し、国民の支持を失ったことを認めるよう呼びかけ、「国民が何を求めているかが今日、示された」と語った。
 元首相はまた、ブット元首相の夫でPPPの共同総裁を務めるアシフ・アリ・ザルダリ氏と21日に会談する計画を明らかにした。「あらゆる民主的勢力と協力することを楽しみにしている」と述べた。
 一部のアナリストはPPPとイスラム教徒連盟ナワズ・シャリフ派との連立の可能性を疑問視している。
 ムシャラフ大統領は投票結果を受け入れ、民主国家構築のために勝利したどの党とも協力すると述べた。 
 選挙監視グループによると投票率は35%。』(イスラマバード19日ロイター)

 

投票率35%は、伝えられた選挙運動の激しさ、華々しさから想像して、パキスタン社会の暗部を如実に反映している。

2008年02月10日

パキスタン大統領選 40

ブット元首相は明らかにムシャラフ政権周辺の陰謀で暗殺されている

【2月10日政治ニュースパキスタン大統領選挙も残すところ後1週間になった。ムシャラフ政権に対する抗議デモ、反武装勢力タリバン、アルカイダの仕業といわれる自爆攻撃は相変わらず跡を絶たないと世界のメディアは伝えている。
選挙戦も終盤に入り、政府は選挙の世論誘導をもくろんで、ブット元首相暗殺原因の国際的調査報告を発表している。
ブット元首相暗殺原因については、政府は爆弾テロの爆風による頭部強打の見解を表明、それに対して、ブット人民党周辺は、銃弾による暗殺だと現場証言を通じて主張していることが、世界のメディアでこれまで伝えられてきた。

パキスタン国民の多くは、当初から政府の発表に対して疑いをもち、ムシャラフ政権による暗殺説を根強くもっている。また、ブット人民党は、選挙戦を通じて政権に対してそのことを訴えてきた。それに対して、政府は国民の不満を払拭する為に、英ロンドン警視庁の調査チームを招聘して事件解明に当たってきた。
8日産経新聞は、7日米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)に掲載されたロンドン警視庁の調査結果を報じた。



ロンドン警察

【写真】ブット元首相の暗殺現場を調べる英警視庁の捜査員ら=1月5日(ロイター)

『ブット氏死因は頭部強打、英警視庁結論と米紙=米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は7日、昨年12月にパキスタンのラワルピンディで爆弾テロにより暗殺されたブット元首相の死因について、爆発の衝撃で乗っていた車に頭を強打したことが原因と英ロンドン警視庁の調査チームが結論付けたと報じた。
ムシャラフ大統領の主張を裏付ける内容。元首相の夫ザルダリ氏が共同総裁を務めるパキスタン人民党(PPP)は、元首相を狙った男が撃った銃弾を受けて死亡したとの見方を示しており、反発も予想される。』(8日産経新聞)



新しい事件当時の映像がでる

9日NHK衛星放送は特集番組「ブット暗殺の謎・15日間の記録」を放映した。放映のなかで暗殺現場の新映像が紹介され、事件解明の決定的証拠に当る場面を丁寧に注釈してみせている。
そのスロー映像による証言は、ブット元首相がサンルーフから消えた瞬間の後に自爆の炎が映しだされている。また、別角度からは、ピストルの発射光も映っている。ピストルの発射映像については、事件後しばらくしてマスコミ報道もされている。

新しい暗殺事件映像は、7日英ロンドン警視庁の調査チームが発表した原因説を覆すのに十分な事実資料と断定してもよいものだ。これでムシャラフ政権の暗殺説が立証されてもおかしくないのだが、パキスタン社会ではその徹底的裁きはどうしてか棚上げにされてしまう。
結果残るのは、この事件に対する国民の反応、ムシャラフ政権陰謀による暗殺説が48%、反武装勢力による暗殺が17%という世論で、最終的には選挙に反映されるだろうというところに留まる。

ブット元首相暗殺事件は結論が出たようなものだが、何かにつけて疑問符が残る暗殺事件である。決定的な不信は、緊急搬送された時の医師の声明だ。2箇所の銃弾による死亡が発表されたが、翌日、政府発表の爆風頭部強打説に発表をひるがえしている。現在、この医師とは誰も連絡が取れないといわれている。また、確かな映像が残るピストル説だが、確かな証拠には違いないのだが、事件当初発表された、2、3回の発射音があったとの証言に対して、新映像のピストル発射光の時は、発射音がなかったという直近の証言が出てきた、つまりサイレンサー銃を使ったとする証言である。さらに、親族による検視拒否の姿勢だ、死後直ぐにブット一族の廟塔に納められた。

最後に、どうしてピストル暗殺説と自爆攻撃説で政府と野党が膠着した抗議合戦に終始するのか。政府が当初から発表している自爆攻撃説は、政権には警備上の落ち度がなかったことの証明になり、だから「テロとの戦い」を進めなければならないのだ、というムシャラフ政権の有利な選挙展望につながるからだ。また、ピストル暗殺説は、明らかにムシャラフ政権陰謀暗殺を証明することになる。理由は簡単だ、タリバン、アルカイダはピストルによる暗殺を企てた前例がないからだ。

何れにせよ、これまでに発表された記事、映像を手繰ると、事件現場側近の目撃者は、首に銃撃痕があったと証言している。私たちは、素朴にこの人たちの証言と放映された新映像から、ブット元首相の死亡原因は、ピストルによる暗殺だったと解釈したい。



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2008年01月27日

パキスタン大統領選 39

カルザイ大統領 パキスタンをなじる
カルザイ大統領【写真】ダボス会議で演説するカルザイ大統領=23日

【1月27日政治ニュース】25日ムシャラフ大統領は、世界経済フォーラム・ダボス会議で、『米軍が(掃討を成功させる)魔法のつえを持っていると考えないでほしい」、『米国はむしろアフガン駐留兵力を増やすべきだ』と演説したと伝えられた。
これに対して、まさか治安統制能力の比較ではないだろうが、パキスタンカルザイ大統領は、同じ会議で隣国パキスタンの反武装勢力拡大をなじる訴えをしたと26日CNN通信は伝えている。

『「アフガンは再びテロの手に」 カルザイ氏が危険性強調=スイス・ダボス(CNN) 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席中のアフガニスタンのカルザイ大統領は25日、CNNのインタビューに応じ、隣国パキスタンなどで勢力を拡大している過激派への対応を強化しない限り、アフガニスタンが再びテロリストに掌握される危険性があると訴えた。
カルザイ氏は、パキスタンでテロ行為が増加していることに懸念を表明。「パキスタンが直面している危険や、アフガニスタンとパキスタン両国と周辺の将来に及んでいる危険に、より注意が払われることを望む」と述べた。

アフガニスタンの治安状況については、暴動が絶えないものの、改善がみられると説明。「昨年よりよくなっている地域もあれば、悪化している地域もある。しかし、悪化している地域は減少しており、改善している地域は広がっている」と述べた。

カルザイ政権は米国のかいらいとの指摘も出ていることについては、「米国はアフガニスタンに多大な支援をしている。米国への感謝を表明していることで、私が傀儡(かいらい)と呼ばれるのなら、そのニックネームを甘んじて受けようと思う」と話した』(26日CNN通信)



ムシャラフ大統領カルザイ大統領は、共に米国から多額の支援を取り付けることだけに腐心しているようだ。さらに、両者共に軍事独裁政権に甘んじることが自他共の利益還元の最大の方法だと信じているように考えられる。