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コソボ 再び内戦か

2008年03月31日

セルビア・コソボ 再び内戦か 31

「人道的介入」は死語になりつつある 7
スーダン・ソンタグ 「叡智の声・具体的な認識」


【3月31日政治ニュース】3月19日の「再び内戦か」の後、テレビ、新聞等でのこれといったニュース発信が無いままで最終回になってしまった。
世界的関心が再びコソボに集まるのは、セルビアの欧州連合(EU)への加盟交渉をめぐる総選挙実施の5月11日前後だろう。

そこで、コソボ独立問題が投げかけたキーワード、「正義の戦争」について具体的に認識を深めたいと思う。
既に「正義の戦争」について、スーダン・ソンタグ氏大江健三郎氏の往復書簡での対話を紹介しながら若干の見解を示してきた。今回さらに突っ込んで認識を整理したい。

発端は、1999年5月2日号「ニューヨークタイムズ・マガジン」に掲載された「われわれはなぜコソヴォにいるのか」で主張されている二行をめぐっての論議に始まる。



「すべての暴力がひとしく非難されるべきものなのではない。すべての戦争がひとしく不正なものなのでもない」というものだ。そして、スーダン・ソンタグ氏の返信に、「戦争は犯罪です。・・・なかには正義の戦争だとみなしうる戦争も、きわめて少数であれ、たしかにあります。戦争という手段をとらなければ、武力による侵略をやめさせる道がないという場合に限って。」と書いている。

また、戦争の撤廃は、文明の生んだ崇高な、もっとも崇高な大望です。戦争を嫌悪する心は、文明化された人間の証です。」。そして、問題としたい文言が続く、「大望や嫌悪の心があるからといって、人間が喜んですべての戦争を捨て去る段階に現実に到達したというわけではありません。」。この認識過程をスーダン・ソンタグ氏は「叡智の声・具体的な認識」と位置づけている。即ち、「善意があっても、思慮深くとも、直接の具体性にとって代わることはけっしてできません。」という米国流プラグマティズムの合理性の帰結を導き出す。

問題は、スーダン・ソンタグ氏が感銘を受けたという、ドイツの「緑の党」がNATO軍のコソボ空爆を支持してドイツが参戦したことである。ご承知のように、ドイツは大戦後の反省から、日本と同じ平和主義を支持してきた経緯があった。しかし、欧州連合(EU)NATO軍の一員として、初めての集団的自衛権の行使に踏み切った。ここで注目しなければならないのは、参戦を「緑の党」が表明した、即ち市民平和団体がドイツ軍の参戦を後押ししたという事実である。それは他でもない「人道的介入」という正義の戦争と判断したからだ。この時、スーダン・ソンタグ氏がそうであったように、市民の成熟した「叡智の声」として世界の多くの平和団体、市民が賛同したわけだ。そして、日本の9条護憲者を馬鹿にした経緯がある。今日、その馬鹿にされた護憲者もここ10年でめっきり少なくなり「叡智の声・具体的な認識」をもつ9条支持者が多くなった。



なるほどスーダン・ソンタグ氏の説得力ある主張には、よくよく考えれば納得しても可笑しくない、むしろ当然といえるかも知れない。
しかし、スーダン・ソンタグ氏がいみじくも指摘した、「人間が喜んですべての戦争を捨て去る段階に現実に到達したというわけではありません。」は、実は歴史は「すべての戦争を捨て去る」ことにはならないの裏返しと理解できる。そう、人間は「すべての戦争を捨て去る」決意をもたないのだ。これが現実である。「戦争は犯罪です」と認め、しかし、「対立は存在する、不正も存在する」。だから「叡智の声・具体的な認識」を弁護するという結論になったという苦渋の選択だ。



一見当然の帰結に思える「具体的な認識」だが、この段階で誰もが犯すであろう選択の間違いが常につきまとう状況に私たちが在るということを自覚する必要がある。
事実、ドイツはその後、米国との集団的自衛権行使をアフガニスタンで実践した、さらに悪いことには、昨年暮れメルケル首相は日本にアフガニスタン参戦を促しに来ている。戦争を始めた悪い友達はさらに友を呼ぶという、とても「叡智の声」とは考えられない誘惑を仕掛ける。これが現実だ。人間にとって、スーダン・ソンタグ氏がいう「段階の到達」などありえないのだ。
必ず起こりうる現実は、ものごとは膨脹する、連鎖を引き起こすことに尽きる。従って、「崇高な大望」など論じる前に、人間の本性をより冷淡に考えて、「武器を持つな」ということだ。



スーダン・ソンタグ氏は知識人ということであれば、両者に対して、「武器を放棄せよ」というしかない切ない宿命を受容することだ。現実の解決にはならないということではあるが、「段階の到達」がない以上、その「叡智の声」の解釈は、飛躍してしまい、取り返しのつかない歴史的汚点をつくる引き金を生む。現に同国の隣人ブッシュ大統領は、イラクに「正義の戦争」の御旗を揚げ先制攻撃を仕掛け無関係の人々を大量虐殺しているではないか。

また、「正義の戦争」だと軍事行動を始めたドイツは、その延長でアフガニスタンに侵攻している。さらに日本にも国際治安支援部隊(ISAF)への参戦を求めているではないか。そのお陰で、あらゆる懸案事項に対する政策能力が全くない福田内閣が、自衛隊の海外派兵を恒久的にできる「恒久法案」を国会に提出してまとめると言い出した。全くもってドイツの牝狐メルケル首相は疫病神だ。



タイトル「セルビア・コソボ 再び内戦か」の連載は、正義の戦争で始まったコソボ空爆は、今、コソボ独立を果たした結果になりつつあるが、その独立を果たす誘導になった空爆について、もう一度検証する意義があると考え始まっている。
注目は独立が成功するかに集約されがちだが、独立にともなう戦争が果たした今後も重要な過程としてみていく必要がある。
今日では、「人道的介入」という言葉は「国際平和協力」というフレーズにとって変わられ、日本もコソボにPKOで自衛隊派遣を検討している。しかし、平和協力のスローガンの下で相変わらず軍隊が機能することは断じて「独立と自由」を保障しないことを学ぶべきときだ。
その意味で今後のコソボ独立の行方に注目を払いたいものだ。



最後に
日本の自衛隊に残された唯一の歩むべき方法は、「人道的介入」の進化した「国際平和協力」などとは一切関わらず、名実相伴う「自衛」に徹することである。これが百歩譲っての結論だ。
さらに「段階の到達」が可能であれば、軍備縮小に専心することだ。



【完】

2008年03月19日

セルビア・コソボ 再び内戦か 30

「人道的介入」は死語になりつつある 6
再び内戦か


コソボ内戦【写真】放火され炎上する国連車両=コソボ北部ミトロビツァ市内

【3月19日政治ニュース】 コソボ北部ミトロビツァのセルビア人居住地区では、連日のように抗議活動が活発化している。十四日には約三百人のセルビア人が国連の裁判所に侵入、建物を占拠したと報じられた。また、それを受けて国連の警官隊と国際治安KFOR部隊は、「裁判所奪還作戦」に備えて建物を装甲車で包囲したという。週末、交渉が決裂、セルビア系住民と国際治安部隊の衝突に発展し、コソボ国際治安部隊(KFOR)に負傷者が出たと伝えられた。
17日CNN通信は、衝突により死傷者がでた模様を伝えている。



『コソボ北部から国連部隊退避 セルビア人との衝突受け=アルバニア系住民とセルビア系住民の分断が続いているコソボ北部ミトロビツァで17日、セルビア人の攻撃で、国連の治安部隊や北大西洋条約機構(NATO)指揮下のコソボ国際治安部隊(KFOR)に負傷者が出た。これを受けて国連は、部隊を退避させていることを明らかにした。

コソボの首都プリシュティナで国連関係者が報告内容として語ったところによると、国連部隊とKFORは、先月17日のコソボ独立宣言に抗議するセルビア人らが先週ろう城した裁判所に踏み込み、中にいるセルビア人らを強制退去させる作戦を実施したが、銃撃を受けたり、手投げ弾を投げつけられるなどの攻撃を受けた。

AP通信によると、続いて騒乱が発生し、少なくとも国連車両1台とNATOのトラック1台が放火された。複数の目撃者は、数人の抗議行動参加者や警官が負傷したと語った。
国連部隊は今後も、ミトロビツァの入口数カ所で検問にあたるとしている。』(3月17日CNN通信)

共同通信が伝えるところでは、『地元警察によると、衝突による国連暫定統治機構の警察官の負傷者は100人以上に達した。またセルビアのメディアによると、セルビア系住民側の負傷者も約100人という。』



この事態は、単なる抗議による衝突というものではなく、明らかに内戦の予兆である。また、

セルビアのタディッチ大統領は13日、欧州連合(EU)への加盟交渉をめぐり連立内閣が崩壊したことを受けて、5月11日に総選挙を実施すると発表した。セルビア民主党と極右民族主義派政党が有利といわれ、欧米が支持する民主派が政権を維持できない事態が予測される。
つまり、コソボ独立の協議テーブルが遠退く結果を招く。さらにこの事態は、現在、独立を承認しているのは27カ国(うちEUは16カ国)だが、今後の承認国に陰りをもたらすことになる。コソボはイスラム教徒が多数を占めるが、イスラム教国の承認はマレーシアだけというのも意味深だ。

この状況は独立宣言を出したものの、世界が承認する独立国家の体裁には程遠い現実だ。
セルビア政府は5月11日に総選挙を実施する。その結果次第ではEU加盟方針を撤回するだろう。そうなれば、さらなる事態の深刻さは当然の現実になる。セルビア政府は、武力によるコソボ独立問題解決は避けると断言しているが、錯綜、混迷の結果は内戦の予兆を現実化させる恐れがある。



【予告】
政治ニュース】サイトは、3月31日をもって更新ならびに配信を中止することになりました。従って、コソボ独立問題について言及する時間も限られてきました。今後の成り行きを大きく左右する総選挙は5月11日です。残念ながら【政治ニュース】の具体的見解を述べることができません。
時間の許す限り、コソボ独立問題が及ぼす、日本の国際人道復興支援のありようと問題点について言及します、ご了承ください。

日本は、コソボ空爆は「国際法的に違法であっても道義的に正しい」という「人道・道義」を強調した「人道的介入」、「正義の戦争」論に納得した。空爆の是非論争は、仮死化した平和主義者の成れの果てとして、恥ずべき左翼だと批判される怖さ現象を醸し出した。
イデオロギーの終焉である。そして3月17日、日本はコソボを独立国として承認した。
「人道的介入」による民族自決を基盤にした独立のシナリオは、道義的にあるべき歴史として決着させたが、これをもって、日本政府は、国際平和維持活動の正当性と必要性を国民に納得させたと自信をつけた、さらに、国民も自衛隊の必要性を完全に理解した方向性が出来上がったと在日米軍再編の正当性を暗に主張することになった。

実は、コソボ独立問題は、日本の国際平和維持活動人道復興支援の今後の占いになる試金石の意味もあるのだ。(続く)



2008年03月11日

セルビア・コソボ 再び内戦か 29

「人道的介入」は死語になりつつある 5
【格物致知】スーザン・ソンタグ 功罪相償うでは許されない


【3月11日政治ニュース】 1999年3月のコソボ空爆をめぐっては、日本は極めて間接的な範疇にあった関係から米国、欧州連合のような「人道的介入」による空爆の是非論争は起きなかった。極めて一部のバルカン半島周辺の研究家、外交専門家などが論評する程度で、それも欧米での論争紹介に留まるものがほとんどであった。

私たち国民が一般に目に触れたのが1999年7月14日朝日新聞の大江健三郎氏のコーナー「未来に向けて」(スーザン・ソンタグ(大江健三郎宛書簡)ぐらいであったように記憶する。
スーザン・ソンタグの人道的「正義の戦争」論である。
それまでの欧州連合で主張されていた「国際法的に違法であっても道義的に正しい」という「人道・道義」を強調した「新戦争論」であった。それをスーザン・ソンタグは、さらに進化させて「道義」を「正義」に単純化させた「正義の戦争」論を断定させたことで、米国を世界の警察国家のニュアンスを与えた。

スーザン・ソンタグスーザン・ソンタグ 「正義の戦争」論について
2004年12月29日各紙は、スーザン・ソンタグ氏死去のニュースを伝えた。テレビも追悼番組を放映した。当然、スーザン・ソンタグ氏の業績を天才的知識人、ジャーナリストとして賞賛、称える内容の記事、放送であった。また、イラク戦争を批判した米国の平和主義者として紹介された。
しかし、スーザン・ソンタグ氏は、強硬なセルビア空爆支持者で加担者だったことについては言及されることがなかったように記憶している。

コソボ独立宣言に思い、スーザン・ソンタグ氏死去について当時の各紙の論評を思い出すにつけ、やはり「正義の戦争」論を検証する必要性を強く意識せざるを得ない。歴史的負の遺産は常に権力によって「正義」に変貌させられる宿命にある。しかし、そのシナリオを作るのは常に権力に束ねられた極めて人間的な一般である。だから、権力の巣窟を許さない為にもせめてもの追懐が必要であると考える。

各紙のスーザン・ソンタグ氏死去の報道について、「政治ニュース」以前のサイトで論評したソンタグ氏についてこの紙面で紹介する。
2005年1月7日 タイトル「米国人 スーザン・ソンタグ」

『2004年12月28日、スーザン・ソンタグ氏死去。米思想界を代表する知識人・作家として報じられた。話題に事欠かぬソンタグ氏であったようだが、私自身は米思想界そのものに興味がなかった為、疎遠であった。しかし、現在の米、ブッシュ帝国の暴走を目撃して、米国に「正義の国」を編曲したその背景、イラク侵略戦争から捏造された「正義の戦争」が日本をエイズ化した根本に、99年NATOのコソボ空爆を支持したソンタグ氏の思想的発想が脳裏に浮かんだ。

朝日新聞が企画した大江健三郎氏との往復書簡による平和談義が思い起こされる。手玉に取るソンタグ論調に大江氏は終始にこやかな応答であった。その書簡内容、ソンタグ論調から米国の米国人の危険な発想を感じ取ったのは私一人ではなかった筈である。確信ではなかったものが事実証拠を瞼に極印された衝撃と自信に帰属した絶望を再確認する結果となったソンタグ発言は、コソボ、アフガニスタン、イラク空爆への誘いに他ならなかった。ソンタグ氏は敢えて5年前に「米国人の良心」を代弁していたのである。否、アングロサクソンの血とでも言うべきか。

「懼れ・心配がある」根拠が先制攻撃を可能にする「正義の戦争」をソンタグ氏が発言したことによって、ブッシュ大統領とイラク戦争支持米国人は米国を体現することに何ら躊躇いを持つことなく、自信に満ちた強い笑顔を我がものにした。さらに深刻な事態は日本を「正義の戦争」目的で米国汚染を蔓延させたことである。加担している日本政府と国民を欺きアングロサクソン化した大罪は、日本文化ではもはや覆すことが不可能な次元に日本を追いやってしまった。その根本要因は日米同盟である。日米同盟が日本人を模造品にしてしまった。ソンタグ氏の訃報を知り改めて私にとって米国は遠い国であることを知らされた。それを決定付けたのは米国の「良心」とやらの理解不可能な「知の領域」である。』(続く)

2008年03月10日

セルビア・コソボ 再び内戦か 28

セルビア コシュトニツァ首相辞任表明

コシュトニツァ首相
【写真】コシュトニツァ首相

【3月10日政治ニュース】 先月のセルビア大統領選挙は、EU加盟の国民投票だといわれ、推進派の現タディッチ大統領が勝利した。その後、セルビア議会は、現実にコソボが独立宣言をした状況でのEU加盟をめぐって紛糾している。
セルビアは経済立て直し打開策としてEU加盟の方向性はできている。ただ、その交渉形式と経緯についてコシュトニツァ首相とタディッチ大統領は真っ向から対立していると、10日産経新聞はその模様を伝えている。



『セルビア首相辞任 EU加盟めぐり対立激化=セルビアのコシュトニツァ首相は8日、ベオグラードで記者会見し、辞任を表明した。コソボが同国から独立したことを契機に、独立を支援する欧州連合(EU)への早期加盟に難色を示す首相のセルビア民主党と、加盟推進派の民主党との対立激化が原因。10日に議会が解散し、5月11日にも総選挙が行われる見通しだが、セルビア民主党が極右政党のセルビア急進党と民族主義政権を樹立する可能性もあり、情勢流動化への懸念が高まっている。



 

コシュトニツァ首相は会見で、「政府は(EU加盟に関して)統一した政策を持たず、機能していない。連立政権は終わった」と語った。
現在、セルビア急進党が最大議席を占めるセルビア議会では、親欧派のタディッチ大統領率いる第2党の民主党、穏健民族派のコシュトニツァ首相率いる第3党のセルビア民主党、また民主派政党のG17プラスの3党が辛うじて政権を維持している。



 しかし、セルビア民主党はコソボ独立に強く反対し、コソボ独立とEU加盟問題は切り離すべきだとする民主党と鋭く対立。最近は、EU加盟交渉凍結を訴えるセルビア急進党の決議案に、セルビア民主党が賛成して閣議で民主党閣僚に拒絶されるなど対立は深刻化していた。外相を民主党、コソボ担当相をセルビア民主党が握る“ねじれ”も対立激化の原因だ。

 2月の大統領選決選投票では、コソボ問題で強硬姿勢をとるセルビア急進党のニコリッチ党首代行がタディッチ大統領を数ポイント差まで追い上げた。EU加盟をめぐる「国民投票」的な意味合いが強い次期総選挙ではセルビア民主党とセルビア急進党が選挙協力する可能性も高く、民族主義政権が誕生した場合、ミロシェビッチ新ユーゴスラビア政権時代のように、欧州内で孤立の道を選ぶこともあり得る。



 

コソボは現在、米英仏独など数十カ国の承認を得ているが、セルビアやコソボ内のセルビア系地区では依然、コソボ独立に抗議する声が強い。
ただ、セルビア経済は停滞しており、株式市場は最近、コソボ問題の影響もあって低迷気味。通貨ディナールも1月以降、主要国通貨比で6パーセントも下落しており、G17プラスのディンキッチ経済相は「政府は(ミロシェビッチ時代の)孤立に戻ってはならない」と警鐘を鳴らしている。』(ベルリン=黒沢潤=3月10日産経新聞)



2008年03月09日

セルビア・コソボ 再び内戦か 27

「人道的介入」は死語になりつつある 4
「人道的介入」から「人道復興支援」へ


【3月9日政治ニュース】コソボは、独立しても経済的、政治的に自主権を行使できるかは甚だ疑問視せざるを得ない。世界のマスコミは、改善が望めないという現実を伝えているが、伝えられた事実よりも現実は悲惨な状態にあることは不思議なことではない。つまり、それだけ疲弊、病んでいる地域の独立に希望を語るのは危険である。



コソボ独立は、米国と欧州連合の国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)の下に、北大西洋条約機構(NATO)平和維持部隊(KFOR)の現地駐留とコソボ独立承認国を中心に構成するコソボ国際運営グループの人的、経済的援助の監視化の下で自治権の独立を目指す形式になっている。
独立に伴う当面被るであろう現実に対して、民族自決の衝突を避けるために平和維持部隊(KFOR)は必要である。反対周辺国との経済摩擦による一時流通機能麻痺のために経済支援は必要である。当然の必要策であると考えられる人的、経済的支援を総じて「人道的復興支援」という言葉で最近語るようになった。



近年、「人道的介入」という言葉がマスコミ、紙面上から消えているように思われる。特に、日本では「介入」という言葉は誤解を招くとして、コソボ空爆以後余り使われていないようである。端的にいえば、介入は人道的ではない側面を持つと考える関係者が増えてきたからだ。
そもそも、コソボ問題で代名詞になった「人道的介入」の原語は英語でinterventionとなっているらしい、国際法では「介入」でなく「干渉」と訳すべきだと指摘する識者がいる。通常、「内政不干渉の原則」で使われているのもこのinterventionであるらしい。



国際関係において「干渉」は「介入」を招くという前提は大いにありうることだ。従って、国際間で「内政不干渉の原則」が尊重され、各国はそれを主張する。コソボの場合は、現実に軍事行使だから当然、「介入」と訳しておいた方がより明確な表現だと考える。
状況においては、介入は警察の意味を持ち正当な手段として主張される、コソボではまさに「正義」であり「人道」であったわけだ。



しかし、日本は米国、英国とは違い、20世紀初頭からの国際間における「介入」は、悲惨な結末を迎える歴史を刻んだ。従って、「介入」という言葉を自ら進んで使うことはなかった。
しかし、21世紀、大戦戦勝国は世界に「豊かさ」を輸出、グローバル化を進め、ケンタッキーフライドチキンやミスタードーナツに象徴される世界流通戦略の舵を切った。さらに、同時現象のように「豊かさ」と「平和」をスローガンとして輸出するようになった。さらに世界が一つになって「平和」構築を目指すことが歴史的意義であると主張するに至った。その一つがお馴染みになった国連組織PKO(Peace-Keeping Operations)、国際平和維持活動である。



日本は冷戦後、国際平和維持活動が世界の潮流になった1992年から緊急人道支援から復旧復興支援を実施するようになった。いわゆる「人道復興支援」という錦の御旗である。そして、最も身近に日常語として語られるようになったのが、2003年、イラク戦争の後方支援を実施する時に制定した、「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」、略称「イラク特措法」、通称、米国のイラクに対する軍事介入(先制攻撃)後の後方支援のことだ。(続く)



2008年03月08日

セルビア・コソボ 再び内戦か 26

「人道的介入」は死語になりつつある 3
「ユーゴの貧しい家」 高失業率70%


【3月8日政治ニュース】 コソボは独立しても経済の改善が望めないという現実を伝えているが、その状況を端的に示している記事が6日産経新聞に掲載されている。

独立コソボの課題 汚職、闇経済が蔓延 健全化のカギ握る地下資源=セルビアから独立したコソボが国家としての基盤を整えつつある。ただ、汚職問題をはじめ、経済的に自立できるかなど課題が山積している。

 「ここはバルカン半島の心臓部。“闇経済”の存在や汚職は避けられない」。独立宣言が行われた2月17日、プリシュティナのプレスセンターで、業務担当幹部(30)はため息交じりに語った。
コソボの闇経済に詳しい関係者(36)によれば、コソボとセルビアとの境では、セルビアで30セント(約50円)の銃弾の密売が頻繁に行われ、コソボ内で最終的に1ユーロ(約160円)で売られるという。汚職にまみれて身に危険を感じる人物が私的に護衛を雇うためで、「国境取引の際には係官を買収するのが慣例」(同)という。

 パキスタンからアドリア海に抜けて、欧州へと流れる麻薬ルートもコソボ経由という。欧州の犯罪はアルバニア系マフィア絡みが多いとされる。
コソボを監督する国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)マフィアの“標的”となる。各種免許の取得など法務はUNMIKが行うためで、関係者は「バングラデシュジンバブエなど、途上国の職員らを買収する」と具体名まで挙げた。
国連開発計画(UNDP)の調査によれば、コソボの約20%の人々は皮肉にも「国連は汚職まみれ」との認識を持つという。UNMIK広報官アレキサンダー・イバンコ氏(45)は「残念ながら、『腐ったネズミ』はどこにでもいる」と苦悩の表情を見せた。

 コソボでマフィアが跋扈(ばっこ)するのはなぜなのか。それは公には約50%、実態は70%とも指摘される高失業率とも関係がある。
「ユーゴの貧しい家」とも形容されたコソボでは、人々の最大の勤め先は政府機関だ。民間も最低賃金で数人雇うにすぎない。それでも雇用市場には毎年、吸収可能な数の約5倍の3万人の若者が流入する。あぶれた人々が、各所で暗躍する環境は十分、整っている。
それでも稼ぐことができなければ、ドイツやスイスなど欧州に出稼ぎに行くケースが多い。闇労働を含む出稼ぎ労働者は全人口の16%にも上る。あるタクシー運転手(36)は「欧州に親族を出さない家族はいない」と語った。ドイツ公共放送ドイチェ・ウェレによれば、出稼ぎ労働者が母国に送金する額は約4億5000万ユーロ(約720億円)と、ざっと政府予算の半分にもなる。

 いびつな経済構造を立て直すため、世銀と欧州連合(EU)は6月にも復興支援会合を開く。駐コソボ米政府代表部も「昨年度に約7800万ドル(約82億円)を支援した米国は今年、支援を4倍にする」と強調した。
ただ、国際社会頼みでは健全な経済は育たない。そうした中で注目されるのは、褐炭(推定埋蔵量約150億トン)の存在だ。現在は火力発電所で、需要の8割にしか満たない1日800メガワットの発電しかできないが、2014年には3倍近くの発電ができる可能性を秘めている。世銀のフランツ・カプス元南欧担当調査員は「コソボは将来、バルカン半島に電気を輸出できる」と話す。

 コソボの地下にはほかにも、鉛や亜鉛、ニッケルなどが眠っており、地下資源を豊富な人的資源でいかに開発していくかが経済自立への重要なカギとなりそうだ。』(コソボ・プリシュティナ 黒沢潤3月6日産経新聞)(続く)



2008年03月07日

セルビア・コソボ 再び内戦か 25

「人道的介入」は死語になりつつある 2
金銭援助と独立の行方


【3月7日政治ニュース】 6日の[政治ニュース]でコソボの経済状況について「IPSJapan」の記事を紹介した。それは、独立しても経済の改善が望めないという現実を伝えたものであった。
セルビアの経済復興は旧ユーゴスラビアの不振を旧態以前として引きずり展望は開けていない。唯一セルビア国民の希望、打開策はEU加盟である。今回の大統領選の結果はそのことを明確に表している。国民は大欧州から取り残されていると感じている。コソボ独立は、その危機感を増幅する何ものでもないのだ。

欧州連合(EU)は暗礁に乗り上げたコソボ独立を火付け役として責任をもって舵取りを行わなければならない。その即効的改善策は他をおいても経済支援ということにしかならない。
6日日経新聞は、欧州連合(EU)はセルビア交渉の打開策として具体的な金銭援助を提示したことを伝えている。

『EU、セルビアに経済支援・地域安定にコソボ問題で譲歩要請=欧州連合(EU)の欧州委員会は5日、コソボの独立に強く反対するセルビアに対し、財政支援の拡充や経済的な関係強化を提案した。レーン欧州委員は「EUはセルビアとの関係強化の用意がある」と表明。セルビア国民の多数はEU加盟を望んでいるとしたうえで、早期の加盟を見返りにコソボ問題でセルビアに譲歩を求めた。

 欧州委はセルビアに年間で2億ユーロ(約320億円)前後の財政支援やEU渡航時のビザ免除を提案。コソボ承認に動くEU加盟国との対決姿勢を強めるセルビアに柔軟な対応を要請した。さらに「セルビア政府の動きは欧州統合に背を向けるように見える」(レーン委員)とし、コソボ独立問題でロシアと連携を強めるセルビア政府をけん制した。

 セルビア南部のコソボは2月17日に一方的に独立を宣言。セルビアは独立を認めず、コソボを承認したEU加盟国から駐在大使を召還するなど、反発を強めている。(ブリュッセル=下田敏6日日経新聞)

また、日経新聞は2月29日に、米国と欧州連合の国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)の任務を独立宣言後も継続して行う会議を開いた記事を紹介している。

『セルビア人地区、部隊展開は困難・EUのコソボ特別代表=欧米のコソボ独立承認国を中心に構成するコソボ国際運営グループは28日、初会合を開いた。警察・司法分野を中心に約2000人の文民支援隊(EULEX)を派遣する欧州連合(EU)のフェイツ・コソボ特別代表は記者会見で「独立反対デモが続く北部のセルビア人地区に支援隊が展開するのは治安上、困難」と述べた。そのうえで「コソボ分断はあり得ない」とセルビア政府などをけん制した。

 フェイツ氏はセルビア人居住区に対するセルビア政府の支援は容認したが、「透明性を確保する必要がある」と指摘。今後の支援隊展開に向けて「セルビア人指導者と協議を重ね、支援隊が脅威ではなく利益となることを説明していく」と述べた。

 会合には米英仏独など15カ国が参加。アハティサーリ国連事務総長特使がまとめた仲介案をもとに、コソボの国造りを進めることを確認した。EUは6月末から国連コソボ暫定統治機構(UNMIK)の任務を引き継ぎ、警察・司法・税関などの分野でコソボを支援する。』(ウィーン=桜庭薫=2月29日日経新聞)

2つの記事から独立宣言の内実を推測すれば、「人道的介入」による「独立」とはいったいどういう意義と個別の価値があるのか、欧州連合の画策と下種の勘繰りが先にたつ。(続く)

2008年03月06日

セルビア・コソボ 再び内戦か 24

「人道的介入」は死語になりつつある 1

【3月6日政治ニュース】3月1日の[政治ニュース]でコソボ問題を「コソボ紛争が象徴する1997年以降の戦争は、「人道的介入」という起爆剤が中心課題だ。そして、「人道的介入」の概念は、戦略的に「集団的自衛権」を正当化する格好の概念になった。」と論じた。



コソボは1999年3月の空爆から現在の独立宣言後も「人道的介入」の背景にある。
独立を宣言したとはいえ、コソボ北部は連日の反対抗議デモで町は騒然としている。関係大使館は閉鎖状態で欧州連合(EU)職員は退避の状態にある。唯一再開した大使館はドイツだけだ。
コソボは現状も国連の監視下にあり、NATOの平和維持部隊が民族対立回避に警備を強化している状況だ。
3月1日日経新聞はコソボにおけるNATO平和維持部隊の増強の模様を伝えている。



『コソボの平和維持部隊、NATOが増強検討=セルビアからのコソボ独立に伴う紛争に備え、北大西洋条約機構(NATO)は現地に駐留させる平和維持部隊(KFOR)増強の検討に入った。セルビアの首都ベオグラードでの大規模デモで米欧の大使館が襲撃されるなど、現地の治安が悪化する可能性が出てきたため。セルビアとの境界であるコソボ北部を中心に監視を強め、民族対立を阻止する方針だ。

 コソボ駐留のKFORは現在は約1万6000人だが、治安情勢の緊迫化に備えて加盟国には数千人規模の部隊が待機している。NATOは近く英独などの待機部隊を現地に派遣。独立を容認していないセルビア人居住区があるコソボ北部の巡回や警備を強化する。』(ブリュッセル=下田敏=3月1日日経新聞)

コソボ独立宣言から約3週間が経ち、最近やっと各紙でコソボの現在位置とこれまでの背景ならびに実態について話題性ある記事が一つ二つと出始めてきた。その一つにIPSJapanも専用サイトでコソボの経済問題を伝えている。
1999年3月のコソボ空爆は「人道的介入」の圧倒的な支持に見守られ開始された。空爆はジェノサイド、「民独浄化」に対する、即時停止の最善策として行使されたという大前提がある。しかし、疲弊しきった旧ユーゴスラビアの経済解体状況がコソボ紛争を巻き起こしたことについては当時から余り論じられなかった。その意味で、今日のコソボの経済事情が紙面に登場したことは貴重なニュースである。



『IPSJapan2008/02/28 コソボ:独立しても経済改善望めず=2月17日のコソボの独立宣言に、人口200万人の大半を占めるアルバニア系住民の間には祝賀ムードが広がる。しかし、世界銀行によれば、コソボの平均年収はおよそ1,800ドル足らず、1人当たりGDPは1,000ドルに満たない。人口の37%が1日2ドル未満の生活を送る。

2月17日のコソボの独立宣言に、人口200万人の大半を占めるアルバニア系住民の間には祝賀ムードが広がるも、同時に、困難な経済情勢は変わらず、悪化すら懸念されるとの認識も深まっている。
コソボ経済は数十年停滞したままだ。だがその原因は、国連コソボ暫定行政支援団(UNMIK)の怠慢やセルビア政府がしばしば指摘してきた地元住民の怠惰に留まらない。

 根源は旧ユーゴスラビア時代にさかのぼる。コソボには数十億ドルが投資されたが、しかし1989年に当時のミロシェビッチ大統領がコソボの自治を廃止し、ベオグラードからの直接統治を導入したことから、コソボの経済活動は崩壊した。

 鉱業、エネルギー、運輸部門に働く数千ものアルバニア系住民が解雇された。しかしセルビア人住民に彼らの代わりを果たす技能はなかった。いずれにしてもコソボ住民のセルビア人がこうした職を埋めるにはあまりに人数が少なかった。埋蔵量150億トンの石炭、数百万トンの亜鉛、鉛、ボーキサイトが地下に眠ったままだ。一般住民は生活のため農業、小商い、あらゆる種類のサービス業に転じた。数千人が海外に移住した。

 世界銀行によれば、コソボの平均年収はおよそ1,800ドル足らず、1人当たりGDPは1,000ドルに満たない。人口の37%が1日2ドル未満の生活を送る。
とりわけ、整備の行き届かない旧式な石炭発電所による電力不足が大きな問題となっている。
独立を認めないセルビア政府からの報復措置が取り沙汰されるコソボの現況を報告する。』(ベオグラードIPS=ヴェスナ・ペリッチ・ジモニッチ、2月20日=翻訳/サマリー=坪沼悦子)(続く)



2008年03月05日

セルビア・コソボ 再び内戦か 23

コソボは米英国の「かいらい国家」なのか 4
米英国はいつも国際コンセンサスを破る


【3月5日政治ニュース】コソボ北部には約4万人のセルビア系住民が居住しているといわれ、コソボ独立宣言後、北部の町で数千人規模のデモが連日起きていると伝えられている。
独立宣言にともなってセルビア政府の具体的な主張に領土問題がある。
2月27日毎日新聞は、領土問題をめぐって両首相の主張を紹介している。



『<コソボ>首相「領土で妥協せず」…セルビアの動きけん制=セルビアからの独立を宣言したコソボからの情報によると、サチ首相は26日、「領土の完全性について妥協しない」と報道陣に述べ、コソボ北部のセルビア系住民地区にセルビア政府が影響力を及ぼそうとする動きをけん制した。同地区では連日、コソボ独立反対のデモが続いており、国連や欧州連合(EU)の職員は安全上の理由から一時的に撤退している。

 サチ首相の発言に先立ち、セルビアのコシュトゥニツァ首相は25日、「セルビア政府は、忠実な市民がいるコソボの一部を支配する意向がある」と述べた。コソボ北部には約4万人のセルビア系住民が居住。北部の町コソブスカミトロビツァでは連日数千人規模のデモがあり、警官隊との衝突が散発的に起きている』(ベルリン小谷守彦=2月27日毎日新聞)

国連安全保障理事会において、ロシアは、国連が独立宣言を無効とするよう主張したが、米欧は「独立しか有効な選択肢はない」とする声明を発表して協議は物別れに終わっている。これに対して、 ロシアは「国連とセルビアの間に、コソボの地位は一方的に変えられないという合意がある」として、独立宣言を国際法違反と指摘している。

実は、欧州連合(EU)の国際法に詳しい専門家筋のあいだでは、コソボ独立は「国際法違反と指摘」する声が多い。3月1日毎日新聞は、自社専門編集委員がパリの国際政治学者と意見交換したそのレポートを掲載している。



『グローバル・アイ:コソボ独立 「国境」戦後合意にゆらぎ=パリに出張し、知り合いの国際政治学者の何人かと意見交換しているが、話はホットなコソボ独立問題になる。目と鼻の先のバルカン半島が不安定化すれば、欧州が深刻な影響を受けるのは90年代に実証ずみである。

 コソボ独立でフランスの学者が抱く関心は2点ある。独立を支持した米国と、英、フランス、ドイツなど欧州主要国は、国際政治社会の戦後合意である「国境の一方的変更はしない」ことを破り、国際政治に不安定要素を持ち込んだのではないか。2点目はロシアがどう出るかである。

 第二次世界大戦末期のヤルタ会談で、戦後秩序が確定されて以降、全欧安保協力会議(CSCE)などを通じて「当事国の同意なくして国境線の一方的変更はしない」ことが国際政治社会のコンセンサスとなってきた。

 力や数を頼んでの国境線の一方的変更が、国際紛争の原因となってきた歴史の教訓でもあった。国境線の変更の中でも、東西ドイツの統一(90年)、ソ連邦の解体(91年末)、チェコとスロバキアの分離(93年)が認められたのは、当事国の同意があったからである。

 しかしコソボ独立は、コソボを抱える当のセルビアが強く反対しているにもかかわらず米国と欧州主要国が支持し、強行された。米欧は「セルビアによるコソボ抑圧が独立の遠因をなしており、今回は例外的ケース」と主張するが、ロシアは「戦後合意の一方的破棄」と非難し、欧州連合(EU)も一枚岩でない。

 スペイン、ルーマニア、スロバキア、キプロスなど、国内に少数民族の独立運動や合併問題を抱える国は、コソボ承認を留保している。「国境の一方的変更」がブーメランとなって突きつけられる可能性があるからだ。

 今後のロシアの出方では学者に二つの意見があった。チェチェンなどをかかえ、ロシアは「国境線の不変更」の立場を堅持せざるを得ないという見方と、ロシアが「米欧による国境線の一方的変更」を逆手にとって、これを政治的ツールとして利用することである。

 「コソボ独立でロシアのとれる対抗策は限られている。ただ大国志向のプーチン大統領は、ロシアの威信を示すために手をこまねいてはいないだろう」。こう語った学者は、グルジアのアブハジアや南オセチア、ウクライナの東部地方など、親ロシアに傾斜するこれらの地域を、ロシアが「民族自立」の名目で併合する可能性に触れた。

 「国境線の一方的変更はしない」という戦後合意を揺るがしかねないコソボ独立が、国際政治に与える影響は決して小さくない。(西川恵=専門編集委員=3月1日毎日新聞)



2008年03月01日

セルビア・コソボ 再び内戦か 22

コソボは米英国の「かいらい国家」なのか 3

【3月1日政治ニュース】 コソボ北部はコソボ住民の約一割がセルビア人で、1997年コソボ紛争前から民族自決運動の火薬庫だといわれている。
コソボ紛争で直ぐに想起させられるのが、「セルビアによるコソボでの虐殺」である。当時米英両国は、虐殺被害者数は「10万人」と報じ、その後の関係者の証言が明らかになるにつけて、「5万人」に減り、さらに精密な検証の結果、「1万人」程度だと推測され、現在の発表は「1万人」説が通常発表されるに至っている。

但し、セルビア政府は「虐殺」をアルバニア人による自作自演、欧州連合(NATO)のでっち上げと主張している。さらに、「虐殺」は、ほとんど無根拠な誇張話だったという説まで出回るようになった。
参考までに[政治ニュース]のこの紙面での見解は、過去20年前から、ソビエト連邦崩壊から、民独自決紛争による相互の「虐殺」があったとだけ付け加えるに留めておく。また、「虐殺」による「難民問題」はこれも同じことで、事実として認識しておきたいのは、「人道的介入」の前段階の難民よりも、米国主導のNATO軍による「コソボ空爆」後の方が大量難民を出していることだ。

難民問題はさて置くとして、よく論じられる「虐殺」の程度の相関関係であるが、「虐殺」は「被害者数」に関係なく、「人道的介入」を余儀なくする国家勢力図を如術に物語る歴史の縮図になっている。

コソボ紛争が象徴する1997年以降の戦争は、「人道的介入」という起爆剤が中心課題だ。そして、「人道的介入」の概念は、戦略的に「集団的自衛権」を正当化する格好の概念になった。
21世紀の戦争は、20世紀初頭の植民地政策戦争から金融戦略戦争、そして現在、「人道的介入」による戦争となっている。
戦争の主役は、当初は英国であったが、今は米国、主役は常に2枚看板アングロサクソン弱肉強食主義の世界公演になっている。(続く)